クエン酸サイクル

§はじめに

・クエン酸回路以降の代謝回路は最終生成物のATPを生み出すために分子酸素(O)を必要とする。従って,クエン酸回路とその後の電子伝達系は共に「好気的」な代謝回路である。「回路;サイクル」=生成物が再び出発物質に使われる閉じた代謝経路。

 

・クエン酸回路の最も重要な目的は「NADH,FADHなどの還元力の強い(電子をいっぱい持った)化合物を大量に調製すること」である。この目的のために,アセチル補酵素Aとしてクエン酸回路に注入された2個の炭素原子(CH3CO)は完全に二酸化炭素(COに酸化されてしまう。作成されたNADH,FADH電子伝達系で最終的にATPに変換される。

 

§クエン酸回路の各酵素

 

ゼロ.ピルビン酸+NADCoA→アセチルCoA+NADH+H+CO

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体

・3種類の酵素が一つの複合体に集まって5種類の化学反応を円滑に進める巨大な酵素複合体である(大きさは大腸菌では分子量460万,牛では840万)。

・ピルビン酸を構成する3個の炭素原子のうち1個は二酸化炭素に酸化され,大量のエネルギーを生み出す。残された2個の炭素原子はこのエネルギーを利用して補酵素A(CoAと結合し,アセチルCoAを形成する(アセチルCoAATPと同様,高エネルギー化合物の一種である)。このときに同時に1分子のNADを還元するので電子伝達系に移行する最初のNADH分子がここで形成される。

 

1.オキサロ酢酸+アセチルCoA→クエン酸+CoA

クエン酸シンターゼ

・ピルビン酸から得られた2原子の炭素をオキサロ酢酸に付加し,クエン酸を作成する。この反応を進めるエネルギーはアセチルCoAが提供する。

・オキサロ酢酸に付加されたアセチル基は370ページ,図17.2中に印が付けられている。

 

2.クエン酸→cis−アコニット酸→イソクエン酸

アコニターゼ

・クエン酸のような3級アルコール(水酸基が結合している炭素の「手」が残りすべて炭素と結合しているようなアルコール)は非常に酸化しにくい=エネルギーを放出しにくい。

アコニターゼは3級アルコールのクエン酸を2級アルコールのイソクエン酸に変換する。

 

3.イソクエン酸+NAD→オキサロコハク酸+NADH+H

                       2−オキソグルタル酸+CO

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ

・サイクル内の最初の酸化反応。イソクエン酸の水酸基がまず酸化され,エネルギーを生む。このエネルギーを利用して1分子のNADHが作られる。引き続きオキサロコハク酸は分子内3位の炭素原子に結合したカルボキシル基をCOとして遊離させる。

・遊離するCOは,1.の反応で付加された炭素原子とは別のものであることに注目。

 

4.2−オキソグルタル酸+CoA+NAD→スクシニルCoA+NADH+H+CO2

2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ

・2個目の炭素原子の酸化。今度はC4の炭素原子が酸化され,最下部の炭素がCOとして遊離する。酸化により得られたエネルギーはスクシニルCoA,そして1分子のNADHの生成に費やされる。ここまでの反応でNADH分子は合計3個生成。

 

※以降の反応はスクシニルCoAに含まれるエネルギーをATPに変換する反応,及びサイクルを閉じるためにコハク酸をオキサロ酢酸に変換するための反応となる。

 

5.スクシニルCoA+GDP+リン酸→コハク酸+CoA+GTP

スクシニルCoAシンテターゼ

・高エネルギー化合物のスクシニルCoAをGTPに変換する反応。GTPは細胞内でADPにリン酸を渡して容易にGDPに戻るので,この反応はATP1分子を作成していることと等しい。

 

6.コハク酸+FAD→フマル酸+FADH

コハク酸デヒドロゲナーゼ

・コハク酸を酸化し,二重結合を持つフマル酸に変換。同時にFADを還元することで更に1分子の高エネルギー化合物を作成する。

 

7.フマル酸+HO→L−リンゴ酸

フマラーゼ

・フマル酸の2重結合を開裂させ,水分子から水素と水酸基を付加し,リンゴ酸を生成する酵素であるが,未だに反応に関する詳細が不明でなぞの多い酵素。

 

8.L−リンゴ酸+NAD→オキサロ酢酸+NADH+H

リンゴ酸デヒドロゲナーゼ

・リンゴ酸の酸化により4個目のNADH分子を生成。サイクルは再びアセチルCoAとの結合により再開する。

 

 クエン酸サイクル1回転によりピルビン酸1分子が二酸化炭素に変換される。この反応の結果

  ・GTP(ATP):1分子

  ・NADH:4分子

  ・FADH:1分子           が生成される。

解糖系を含めて考えるとグルコース1分子より

  ATP(GTP):2+1x2=4個

  NADH:2+4x2=10個

  FADH=1x2=2個         が生成される。

 

FADH,NADHはそれぞれ電子伝達系・酸化的リン酸化によりATPへと変換される。