生化学 I  講義補助資料:糖と多糖

 

 

§糖(単糖)の定義:

・炭素原子が3個以上で,・直鎖状の・ポリヒドロキシアルデヒドアルドース)またはポリヒドロキシケトンケトース

:トリオース,C:テトロース,C:ペントース,C:ヘキソース

 

c.f.:化合物命名においてよく利用される接頭数詞:

1:モノ,2:,3:トリ,4:テトラ,5:ペンタ,6:ヘキサ,7:ヘプタ,8:オクタ,9:ノナ,10:デカ,11:ウンデカ,12:ドデカ

 

 

 

D体とL体:糖に限っては,教科書147ページのようなフィッシャー投影法において分子の一番下(C1を上,C6を下に書いた表記)の構造がD−グリセルアルデヒドと同じならばD体,そしてその分子の鏡像異性体がL体である。

 

説明: スライド1

エピマー不斉炭素原子の1カ所のみにおいて立体配置が異なる糖同士は互いにエピマーであるという。

 

説明: スライド2

アルドースケトースの関係:アルドースは1位の炭素がアルデヒド,ケトースは1位の炭素はアルコールで2位の炭素がケトンである。それ以外の原子の配置は全く一緒ならばアルドースは「〜オース」,ケトースは「〜ルロース」と名付けられる。たとえば,リボースとリブロース,キシロースとキシルロースは互いにそのような関係にある。

 

説明: スライド3

直鎖状構造と環状構造:アルドースは分子内化学反応により直鎖状構造から環状の「ピラノース構造」を作ることができる。ケトースは直鎖状の構造から環状の「フラノース構造」を作る。この2個の環状構造の違いは環に含まれる原子の数(ピラノースは炭素,酸素個,フラノースは炭素,酸素個)。それぞれ親化合物のピランフランから名前が由来する。例:D−グルコース(直鎖)・D−グルコピラノース(環状)

 

 

 説明: スライド4

環状糖構造のα−体とβ−体:149ページ図8.4にあるように,直鎖状の糖が環状構造を作る際,環を閉じる場所(ピラノースはアルデヒドのC1,フラノースはケトンのC2)において2通りの異性体が考えられる(水酸基がC6のCHOHに対し環平面の「同じ側」にあるか,「反対側」にあるかの違い)。この違いで,環状構造をα−体β−体と区別する。つまり,同じグルコースの分子でも,環状構造ではα−D−グルコピラノースとβ−D−グルコピラノースの2通りの構造がある。このような異性体を互いにアノマーであるという。

説明: スライド5

 

環状構造の「還元末端」,そして「還元糖」の定義:アルドースのC1にあるアルデヒド基,そしてケトースのC2ケトンは他の化合物を還元する力を持つ。これを受けて,これらの糖が環状構造をとった際にも,そのアルデヒドとケトンに相当する部位は「還元末端」と呼ばれる。還元末端がフリー(他の糖と結合していない,またはその他の化学的修飾を受けていない)糖は「還元糖」と呼ばれる。

説明: スライド6

環状構造のコンフォメーションコンフォメーション」とは化学的に同じ化合物が水中でとる異なる構造のこと。β−D−グルコピラノースの水中構造は通常「いす型」コンフォメーション(150ページ,図8.5)という形をとるが,このいす型構造には各炭素原子の水酸基と−CHOHが全部横向きに突き出ているエカトリアルコンフォメーションと全部垂直に突き出ているアキシアルコンフォメーションが存在する。また,「いす型」の構造のほかに糖は「ボート型」と呼ばれる不安定なコンフォメーションを作ることもある。

説明: スライド7

糖誘導体(直鎖状構造で考えよう):

・1位のアルデヒドが酸化された化合物:アルドン酸(グルコース→グルコン酸)

・6位の第1級アルコールを酸化:ウロン酸(グルコース→グルクロン酸)

・アルドース・ケトースを還元した場合:アルジトール(グルコース→グルシトール)

・デオキシ糖:特定の−OHが−Hに置き換わっている化合物。DNAを作る2’デオキシリボース等は代表例。

・アミノ糖:水酸基がアミノ基に置換された糖。(グルコース→グルコサミン)

 

§糖の重合:多糖(グリカン

多糖(グリカン):単糖がグリコシド結合を介して結合した分子の総称。構成する糖が1種類ならホモ多糖,多種類ならヘテロ多糖である。

多糖の重合様式:タンパク質と核酸とは大きく異なり,枝分かれした結合が可能。その結合の様式は非常に多様なため,名前の付け方がきわめて複雑になってくる。

 

<二糖を用いた命名法の説明>

 

命名の特徴その1:2個の糖が酸素を介して結合しているので,このことを示すために正式名の頭にイタリックのを付記。

命名の特徴その2:結合に関与している炭素原子に還元末端に相当する炭素が含まれているかを確認する。なぜなら,還元末端はα−体とβ−体という2通りの異性体が存在し,結合時にどっちの構造をとっているのかは大変重要な構造情報であるためである。たとえばラクトースにおいてはガラクトースの1位炭素は還元末端であり,β−体となっている。この情報も明記する。

命名の特徴その3:2個以上の糖分子が結合する際,環のどの炭素が結合に介しているかをまず調べる。たとえばラクトースではガラクトースのC1とグルコースのC4が酸素原子を介して結合する。このとき,結合に(1→4)という付記を行う。

 

 

 

 

  以上をまとめるとラクトースの正式名は:

−β−D−ガラクトピラノシルー(1→4)−β−D−グルコピラノース

 

説明: スライド8

この糖は,グルコースのアノマー炭素が結合に関与していないので「還元糖」である。

  一方でスクロース(ショ糖)の正式名は:

−α−D−グルコピラノシル−(1→2)−β−D−フルクトフラノシド。

 

 

説明: スライド9

 

 

ラクトースと違い,二個の糖が還元末端をつきあわせるような形で結合していることに注意。だから正式名の中には2カ所のアノマー炭素(グルコースのC1;αとフルクトースのC2;β)の構造情報が含まれている。

 

§いろいろな多糖類:

1.セルロース:グルコースからなるホモ多糖。結合はβ(1→4)グリコシド結合。

1本の分子でだいたい15,000個のグルコースが結合している。教科書153ページの図8.8にあるように,セルロースは植物細胞壁の主要構成成分。セルロースのβ(1→4)結合は比較的まっすぐな直鎖状分子を作るので,この直鎖状分子が水素結合,また別の糖のリグニンの作用によって布のように密に「織り込まれて」植物の細胞壁を作る。

同じような分子で昆虫の外骨格を作るキチンというのがあるが,これは構成糖がグルコースではなく,−アセチルグルコサミンである。

2.デンプン,グリコーゲン:植物の栄養貯蔵体であるデンプンは2種類の分子,「アミロース」と「アミロペクチン」によって構成されている。アミロースはセルロースと同じようにグルコースを構成単位とするが,その結合様式はα(1→4)である。たったこれだけの違いだが,アミロースはこの結果教科書154ページの図8.10の様にらせん状の構造を形成するようになる。アミロースは細胞の中でも非常に不定型で,規則性のない構造である →消化酵素が入り込んで,グルコースを「切り取り」やすい。

  アミロペクチンはアミロースと同様α(1→4)結合の直鎖状分子が基本であるが,これに加えて24〜30残基ごとにα(1→6)結合の「枝分かれ」があるのが特徴。

  一方,動物では肝臓の中に貯蔵されるグリコーゲンが主要な糖貯蔵体。グリコーゲンはアミロペクチンとほとんど同じような分子。ただ,枝分かれがより頻繁にあり,

8〜12残基おきに一つの枝分かれがある。